かっこと句点の使い方は、意外にややこしいものです。例えば小中学生の義務教育では「~でした。」というように、かっこ内であっても文が完結していればその終わりを示す句点を置きました。これは公用文書も同じです。閉じかっこの前に句点を置くというのが基本です。ところが、社会人になると「~でした」というように句点がない場合が多く、少なからず戸惑いを招くことになります。
当社では、『記者ハンドブック』や『標準用字用例辞典』に準じてテープ起こしの作業を行っていますが、この『記者ハンドブック』では、かっこと句点の関係はどうなっているのでしょうか。
1.カギかっこ「 」で囲まれた会話文に句点は基本的に付けない。
段落末が会話文のときは句点を付けない。
「~した」
かっこ直前に主語などの語句があり、一文としてつながる場合には、段落末であっても句点を付ける。
そのひと言は「~した」。
2.丸かっこ( )ではどうでしょうか。
部分的注釈の後に句点を付ける。
~した( )。
文章全体の注釈、筆記者などは、丸かっこの前に句点を付ける。
~した。( )
情景描写などでは、段落の終わりにあるときは丸かっこの前に付けます。
~した。( )
文中のときは後に句点を付けます。
~した( )。~した。
これは絶対法則ではなく、それぞれの用字用例の本によって違います。表記方法が1つに定められてないことが日本語をややこしくしている点でもありますが、こうした曖昧さは日本人気質から生まれたものかもしれません。イエス、ノーをはっきり表現しないと言われる日本人ですが、必ずしも白か黒かではなく、その曖昧な中で表現される機微があることもあります。行間を読むといわれるものです。多様な表記方法があることを許容する日本語。その魅力は、ガレリオドラマ風に言えば “実に興味深い” 迷宮です。